旨味、弾力、申し分なし! 恐るべし、吉浜産干し鮑!

 コースはアミューズからデザートまで全部で8品。お目当ての鮑は4番目に登場した。つやっつやの餡を纏った鮑は40頭といえどもかなり立派。

 これで40なら3頭っていったいどんな大きさなんだろう?  なんて考えながら鮑をひと口ほおばる。

シノワの吉浜産鮑はその締まった肉質、香り、味の深み、なめらかな食感で食通たちを唸らせる。最高の食材の魅力を最大限に引き出した逸品。

 おほほほほ~、あまりの美味しさについ笑ってしまったわ。ほどよい弾力があり咀嚼するごとに旨味がじんわり伝わってくる。これが世界三大鮑のすごさってやつですね。

 鮑の下にはフォアグラと大根の鉄板コンビ。大根と鮑、フォアグラと鮑、大根とフォアグラ、はたまた単独でと食べあわせが楽しくって仕方がない。

 なぜなら鮑に負けじと、フォアグラと大根が良い仕事してくれているのです。ふわりとした軽さの中にコクはしっかりあるフォアグラ、そしておでんから発想した大根、これがまた絶品なのです。

 大根の真中をくりぬき乾燥した貝柱を入れ、フレッシュな鮑からでたスープと日高昆布の出汁で1時間ほど炊いたそう。いくつもの旨味を十分すぎるほど吸った大根をイメージしてみて!

 主役級の食材がひとつになったこの皿、それはそれは見事なまでの味と食感のハーモニーが繰り広げられておりました。

 先に鮑の話をしてしまいましたが、順番としてはアミューズの後に「シノワ特製 香港スタイルバーベキューの盛り合わせ」がまいります。

ローストポークのクリスピーなことといったら! ピクルスやクラゲ、ブドウ豆などバラエティ豊かで楽しくなってしまう前菜。

 皮がパリッパリのクリスピーポーク、漢方豚の叉焼、広東式ローストダックがクラゲや紫キャベツのピクルスとともにお皿に鎮座。

 バラエティあふれる前菜で一息ついたところに極上の頂湯スープが!

 最上級と言われる頂湯は15時間ほど蒸すことで雑味が一切ない透明感のあるスープなのだ。日本では手に入らないこだわりの金華ハムの香りたるや!

まろやかでコクのある頂湯スープにうっとり。濁りがまったくない澄みきった琥珀色のスープはとろみすら感じるほど。

 そのとろんとなめらかなスープの中にはフカヒレ、烏骨鶏、ネギが入り、あまりの滋味深さに全身の力が抜けていくのがわかる。なんと心にしみわたる味なのだろう。これがメインでないということは、これからいったいどこまですごい料理がやってくるの?

 コース前半にしてすでにテンションマックスなんですけど。

2016.09.26(月)
文・撮影=高橋綾子