未知の世界を探る“苔さんぽ”に出発!

思わず見とれる渓流の美しさ。しかし、奥入瀬にはまた別の驚くべき美の世界が待っていた。

 苔さんぽは、約1キロの距離を2時間半かけて歩くと聞いて、「ずいぶん時間をかけるんだなあ」と思っていた。が、スタート地点の雲井の滝で、苔をルーペで覗いたとたん「なっなんだこれは……」と、目も足もその場に釘付けになった。岩に貼り付いている苔が、ルーペで覗くとまったく違うものに見えるのだ。

苔にルーペを近づけると、今まで見えなかったものが見えてくる。

 まるで、苔が森のようだったり、緑の大蛇の皮のようだったり。自分が小さくなってミクロの世界に入りこんだかのようだ。確かに、よーく見ると形の違う苔が集合して生えて、全体が緑の絨毯のように見えているのだった。夢中になって、苔をあれこれルーペで見ているとあっと言う間に時間が経つ。

ルーペで覗いたミクロ世界では、苔がまったく違うもののように見える。ネズミのしっぽのような形のネズミノオゴケ。(C)小野アムスデン道子
蛇の皮のようなジャゴケ。(C)小野アムスデン道子

 また、私たちには見えないものが見えているかのように、ネイチャーガイドの丹羽さんが珍しい冬虫夏草や、虹色に光るヤマナメクジの通った跡などを教えてくれる。

橋全体が苔でできているかのよう。
これが不思議な冬虫夏草。昆虫やクモなどに寄生するきのこだ。
こちらはクサゴケ。

 木漏れ日にキラキラ光る奥入瀬の森と清らかな渓流は、歩いていて本当に気持ちがよい。

 森林養生とはこのこと。そして小さなルーペを持つことで世界がまったく違って見えることに感動する。奥入瀬渓流の森は、学術的にも評価されており、2014年にはここで海外からの学者も参加する苔の学会も開かれたのだという。

学術的にも貴重な奥入瀬の苔は、苔メンの活躍もあり、脚光を浴びている。

 この生きている森、これからも大事にしていかなくては! そしてルーペでの苔観察がこんなに楽しいとはと、驚かされた旅だった。

星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル
所在地 青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231
電話番号 0570-073-022
URL http://www.oirase-keiryuu.jp/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

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日本のさまざまな地方の隠れた魅力を掘り起こし、プロデュースすることで日本の観光に一石を投じてきた星野リゾート。全国に展開されているその各施設を訪れ、その地ならではの遊び方、旅の仕方を再発見していきます。グルメ、自然、伝統工芸……、思いっきり日本を遊ぼう!

2016.07.31(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵