星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル (前篇)

 日本の地方の魅力を掘り起こし、プロデュースすることで日本の観光に一石を投じてきた星野リゾート。その各施設を訪れ、地方らしい遊び方、旅の仕方を再発見していこうというシリーズが「日本を遊ぼう!」。第1回は「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」に泊まり、日本の特別名勝と天然記念物に指定された奥入瀬渓流を楽しむ旅をご紹介します。

苔の聖地ならではの“苔ルーム”って?

清流と深い緑、苔やシダが原始の森を思わせる奥入瀬渓流。ひと味違う歩き方を体験。

 青森県・十和田八幡平国立公園にある奥入瀬渓流。そのほとりに立つ「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」のラウンジ「森の神話」に足を踏み入れると、まずは壁全面を覆うガラス窓の向こうの緑に目が奪われる。

 このラウンジの窓側のチェアは渓流の森に面して並ぶ。ここでお茶をしながら窓の外を見て過ごすだけで、緑の美しさに心が癒される。

 こちらのホテルは、八戸駅、新青森駅、青森空港から、それぞれ無料送迎バスで約1時間半。三沢空港からでも車で約1時間40分。東館と西館に全189室を擁し、ほとんどの部屋は44平米以上とゆったり。そして、奥入瀬を愛した岡本太郎の巨大な作品が東西それぞれのラウンジを飾る。

ラウンジ「森の神話」の中央には、高さ8.5メートルで重さ5トンというブロンズ製の岡本太郎の作品「森の神話」が飾られている。奥入瀬の緑が借景だ。

 奥入瀬渓流の一帯は、森の木々だけではなく、大地も苔むして緑。十和田湖からの潤沢な水に恵まれ、太平洋側からヤマセと呼ばれる冷たく湿った風が吹くために、多くの苔やシダが育ちやすい環境にある。日本に約1800種あるという苔のうち約300種類もの苔がここ奥入瀬で生息するという苔の聖地なのだ。

 このホテルでは、“苔さんぽ”という苔のミクロの世界を観察しながら歩くアクティビティが用意されているほか、毎晩、渓流の成り立ちやそこに生きる苔をはじめとする植物などについて興味深い話を聞くことができる会“森の学校”が催されている。さらに驚くのは、“苔ルーム”という名の特別な客室があること。

壁の飾りやベッドカバーも苔色。苔に囲まれて眠るかのような苔ルームの寝室。

 モスグリーンの苔カラーで、モフモフした質感にこだわった部屋は、苔玉が飾られ、スリッパからクッション、ベッド周り、そして石鹸やトイレットペーパーなどアメニティにいたるまで、苔色づくしだ。

左:スリッパまで苔が生えたかのよう。
右:苔の観察に必要な霧吹きやルーペも揃う。

 ここは、苔玉作りや“苔さんぽ”のアクティビティ、苔玉アイスのデザートや苔すずしというお菓子などを楽しめる“苔ガールステイプラン”用の部屋で、苔を観察するためのルーペや霧吹きなども置かれている。苔好きには夢の部屋かもしれない。

2016.07.30(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵