南蛮文化が花開いた16世紀の天草へと導く部屋

木立の中を歩いて向かうヴィラC。こんなアプローチにもワクワクする。

 ヴィラCは、5組のゲスト専用のレセプションと個室レストランを完備。ヴィラA、B以上に、プライバシーが守られたなかで過ごすことができる。

 インテリアに表現されているのは、ポルトガルの船が往来し、南蛮文化が花開いた頃の天草。それらを、ラグジュアリー感を損なうことなくみごとに表現した部屋は、居心地がよく、たっぷりと天草を感じさせてくれる。

南蛮文化をモチーフにしたインテリアやベッドサイドの書棚。大人の好奇心をくすぐるアイテムがあちらこちらに。
すぐ近くに緑を感じるゲストルームは、雨の日も窓の外の景色がきれいで、一日じゅう籠っていたくなる。

 食事はすべてのゲストが、コース料理を個室レストランでいただくスタイル。営業時間内の好きな時間に利用できるから、ディナーの予約時間に煩わされることもない。ゆったりとした気分で味わう料理は、天草の旬の食材を使っているのはもちろん、地元産の陶磁器に美しく盛りつけられていて、目も楽しませてくれる。

左:ディナーは天草の山海の幸を美しく盛り付けた和懐石。
右:朝食は和洋食いずれかをチョイス。レストランのテラスで海を眺めながら食べることもできる。

 ヴィラCに泊まるのなら、サンセットタイムはぜひテラスへ。木々の向こうに広がる東シナ海に沈む夕陽は、感動そのもの。かつて人々が船で行き交っていた頃、天草はポルトガルやマカオ、上海と通じていた。海を見て暮らしていた人々の気持ちに思いをはせれば、このホテルを選び過ごした時間は、さらに有意義なものになる。

緑の向こうの海を染める夕陽。各国の船が往来し、キリシタンたちがポルトガルへと向かった東シナ海の美しさは、今も変わらない。

 「五足のくつ」という風変わりな名前は、1907年に、与謝野鉄幹や北原白秋など5人の詩人が、九州を旅して天草のフレデリック・ガルニエ神父を訪ねた紀行文『五足の靴』に由来する。1892年に天草に赴任し、天草の教徒と同じ質素な暮らしをしながら宣教活動に励んだガルニエ神父が、私財を投じて建てた大江教会は、ここから車で20分ほどのところにある。

漁村を見守るようにして立つ﨑津教会(左)と、小高い丘の上に立つ大江教会(右)。ここを訪れてから「石山離宮 五足のくつ」に泊まれば、天草の旅はより思い出深いものになる。

石山離宮 五足のくつ
所在地 熊本県天草市天草町下田北2237
電話番号 0969-45-3633
URL http://www.rikyu5.jp/

2016.08.08(月)
文・撮影=芹澤和美