ホップの肥料のためだけに50頭近い牛を飼育!

郊外の農家ならではの趣がある「ホップクラウト」の母屋。

 予習が終わった後は、ホップ農家へと急いだ。

 「ホップクラウト」は、近隣のホップ農家の中でも規模が大きく、近代的な設備を導入していて、10種類のホップを生産している。デ・ライク、ロマン、デ・ハルフェマーンなど、7軒のビール醸造所がここで生産されたホップを使ってビールを造っているという。

 春にはホップの若芽摘み体験、夏には農場見学ツアーなど、観光客の受け入れにも積極的だ。ウォートさんと妻のベネディクトさん、そして後継ぎのロエルさんを中心とした家族で経営している。

まずは、ボードを見ながらホップの生育についてのお勉強。

 農場入り口のボードの前で、ベネディクトさんが待っていてくれた。まずは、ボードに描かれたホップの生育過程の絵を見ながら、新芽の発芽から収穫までの工程を説明していただく。

 「ホップ博物館」で予習済なのですんなり聞くことができた。そして、ホップ畑へと向かう途中、牛舎があった。「あれ? 畜産も兼業?」と思いきや、ホップの肥料のためだけに50頭近い牛を飼っているのだという。びっくり!

空に向かって伸びたホップの蔓が、まるでカーテンのようにならんでいる。

 広大なホップ畑には、約6メートルもの高さに張られたワイヤーに沿って、空を目指すかのように伸びたホップの蔓が、整然と、カーテンのように連なっていた。蔓が巻き付いているワイヤーは、土に還る素材でできているということにも驚いた。「ホップクラウト」は、最新の設備とともに、最新のエコ対策が施された農園でもあるのだ。

 壮観なホップのカーテンを眺めていたら、前方から「ガガガーッ!」と作業車がやってきた。次々とホップの蔓がワイヤーから切り離されて、バッサバッサと荷台へと倒れ込んでいく。あっという間に荷台がホップの蔓でいっぱいになった。運転していたのはベネディクトさんのご主人のウォートさんだった。

左:いきなり作業車に乗って現れたウォートさん。あっという間にホップの蔓が切り落とされていく。
右:若き後継ぎ、ロエルさん。穏やかな笑顔の17歳だ。

 その後から背の高い少年が、一気に切り落とすことができなかった蔓を1本ずつ切り落としていた。息子さんのロエルさんだ。なんと、まだ17歳。父の後を継ぐことを決めている。実は、ベルギーでは、16歳からビールを飲むことが許されている。彼はもう、ビールの味を知っている、立派なホップ農家の後継ぎなのだ。

左:収穫されたホップの蔓が機械に吸い込まれていく。
右:コロコロと転がり出てきたのはホップの実!
ベネディクトさんの足の下のホップが自動的に撹拌されて乾燥されている。この部屋、もの凄い湿度!

 そして、切り落としたホップの蔓を敷地内の工場に運び、機械で実を採取、手作業で異物を取り除いてから、60度に温め、3~4時間、機械で撹拌しながら乾燥させる。そして、別の工場に送ってペレット状にしたものを、袋詰めして各醸造所へと出荷していく。

 最後に、敷地内のビアカフェへと案内された。この農家で栽培されたホップを使っているというビールのテイスティングだ。

 すると、ベネディクトさんがアコーディオンを弾きながら歌い出した。歌詞はベルギービールの飲み方だ。「まずはグラスを回しながら注いで、色を見て、香りを楽しんで~」などと続く。なんて楽しい農園見学だこと!

左:ビアカフェの照明にもホップが!
右:「ホップ・クラウト」のホップを使ったビール、カスティール。ホップ畑を見てからいただくと、香りも味もことさら美味しい。
ベネディクトさんの歌に合わせて、ベルギービール・スペシャリストのヘールトさんがビールの飲み方を見せてくれた。

Hoppecruyt(ホップクラウト)
所在地 Provenplein 69, 8972 Proven, Belgium
電話番号 057-30-0598
URL http://www.hoppecruyt.be/en

2016.07.26(火)
文・撮影=たかせ藍沙