海女ちゃん食堂のランチは鮮度抜群の島の幸

山頂まで登り、そこから道を下って海岸沿いへ。迷ったら、海の見える方角へ歩けばいい。

 港近くの集落から、標高約104メートルの山まで坂道を歩き、緑の道を下って海沿いの周回道路に戻るのが、定番の島周遊コース。登り坂は想像以上に急で、この島の人たちがみんな健脚の持ち主なのも、頷ける。幻の大根とも言われる特産品の湯島大根やサツマイモがなる畑を通り過ぎ、山頂からの眺めを堪能したら、海沿いへ。

エメラルドグリーンの海あり、緑の山あり。豊かな自然は、島の宝物。

 きつい登り坂で汗をかいた後は、お腹もペコペコだ。お待ちかねのランチタイムは、港近くの「海女ちゃん食堂 乙姫屋」。テーブルに所狭しと並ぶのは、タコにサザエにウニなど、旬の島の幸。海女さんが潜って獲ってきたばかりの食材や、水揚げされたばかりの魚を使うから、内容は日替わりだ。

 島の海鮮料理というと、やや武骨なイメージがあるけれど、目の前に並んだ料理は盛り付けが可愛らしくて見た目も華やか。

 料理を用意してくれるのは、湯島唯一の海女さんでもある姫野千月さん。朝の漁に昼の食堂、そして干潮時にはまた漁へと、多忙な毎日を送っている。東京で美容師をしていた千月さんが、生まれ故郷である湯島に家族とともに戻り、幼い頃から親しんだ海に潜り始めて15年。今ではすっかり、島の顔となっている。

左:築100年の古民家をそのまま使った店。まるで田舎のおばあちゃんの家に遊びに来たような気分。
右:盛り付けもキレイで、見た目も楽しい海女ちゃん定食。獲れたてのものを使うから、内容はもちろん日替わり。

海女ちゃん食堂 乙姫屋
所在地 熊本県上天草市大矢野町湯島610
電話番号 080-5604-4292(完全予約制)
営業時間 10:00~20:00(漁の状況による)
定休日 火曜
URL http://www7a.biglobe.ne.jp/~turibune-otohime/otohimeya.html

驚くほど甘みがある安納芋系の芋、湯島甘藷。生産量も少ない貴重なこの芋を、天草市の骨太な酒の作り手「天草酒造」が、極上の焼酎に仕上げた。

 島旅のお土産にしたいのが、この島で採れる湯島甘藷で仕込む芋焼酎「池の露 湯島」。湯島甘藷ならではの甘みが感じられる逸品は、出荷本数限定1000本。

 毎年、発売されると即完売という幻の焼酎だが、タイミングと運がよければ見つかるかもしれない。作り手は、手作業にこだわる「天草酒造」。

 2016年は12月1日より販売予定で、湯島では古賀酒店、島外では熊本県内の4店舗のみで販売している。

天草酒造
所在地 熊本県天草市新和町小宮地11808
電話番号 0969-46-2013
営業時間 8:00~17:00
定休日 日曜、祝日
URL http://ikenotsuyu.com/

 猫とたわむれ、人と出会い、ご馳走も味わった湯島散策。島を後にするのはちょっと寂しいけれど、帰る頃にはきっと、心が元気になっているはずだ。

【取材協力】
上天草市 観光おもてなし課

電話番号 0964-26-5512
URL http://www.city.kamiamakusa.kumamoto.jp/q/list/129.html

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn