日本の伝統文化と寛ぎを世界に知らしめる「進化する旅館」

外壁には江戸小紋のモチーフを採用する。

 旅の質に徹底的にこだわり、個性的な宿泊体験を提案する星野リゾート。圧倒的な非日常感を提供するラグジュアリーブランド「星のや」、温泉旅館「界」、西洋型リゾート「リゾナーレ」という3つのサブブランドを擁し、タヒチ、バリ(2016年11月開業予定)へと海外にも展開するなか、2016年7月20日(水)、東京の中心地に高級日本旅館「星のや東京」を誕生させた。

 皇居も間近な大手町フィナンシャルシティの一画。「塔の日本旅館」をコンセプトとする建物は地下2階、地上17階。周囲にモダンな日本庭園を張り出し、超高層の街で清々しい和の情緒を漂わす。

 ビルの谷間を抜け、京都の庭師が丹念に仕上げた庭を進むと、エントランスが現れる。見上げる建物を覆うのは、麻の葉をモチーフとした抜き型。遠目にはわからなかった文様が、近づくほどに浮かび上がってくる。江戸小紋の粋な趣を写したデザインだという。

壁一面に並ぶ下駄箱が圧巻の玄関エリア。突き当たりには季節を表す花飾りが。

 玄関で半纏姿のスタッフに迎えられ、青森ヒバの木扉から館内へ入れば、畳廊下に格天井を掲げた厳かな空間が広がる。壁面に並ぶ下駄箱、漂う香の気配。旅館へたどり着いたという安堵感が、すっと心に染み渡っていくようだ。

 ここでゲストは靴を預けることに。一枚板の上がり框(かまち)から先、畳の柔らかさを踏みしめつつ、客室へ。

左:玄関の木扉には、樹齢約300年の青森ヒバを一枚板にして使っている。
右:星のや東京のアイコンでもある玄関の下駄箱。扉は精巧な竹細工。
パブリックエリアとなる2階の中央には、フロント・カウンターを設ける。
左:2階のラウンジ・スペース。奥の小上がりは茶室や舞台としても活用。
右:パブリックエリアのトイレ・スペースは施設、表示ともに日本らしく細やか。

2016.07.20(水)
文=上保雅美
撮影=佐藤亘