ストリーミング配信が変える音楽との出逢い

伊藤 Jポップの音楽にも奥行きが出てきたということですね。でも考えてみれば今アーティストを目指す15歳は、Uruに影響をうけて歌い始めたと言ってもおかしくない。もうJポップも何回転もして、Uruみたいなアーティストが“これから”を作っていくんでしょう。たしかに彼女の歌声は素晴らしい。オリジナル楽曲で何をどう伝えていくか楽しみ。出来れば、カラオケで様々な世代が歌うような大ヒット曲を目指して、音楽業界を賑わせてほしい。

山口 日本では、シンガーソングライターがスターになってきた歴史の中で、過剰にオリジナリティやアーティストのパーソナリティを求める傾向が、業界内やメディアにあるように感じます。特に女性アーティストについては、その傾向が強い。なので、キャラクター的にもエキセントリックなタイプが注目されやすい。僕もそういうタイプのアーティストは好きですが、もっと純粋に音楽的な、時代感がありつつ、クオリティの高い作品を作って人気が出る女性アーティスト、クリエイター型アーティストと呼べるようなタイプが増えても良いのでは? と思います。Uruにはそういう方向を目指してほしいです。

伊藤 ストリーミング型の配信サービスが増える中、音楽との出逢い方も変わっていきますよね。純粋な音楽的な作品にも、今までにはなかった可能性があると思います。発売日も値段もタイアップも、今までのビジュアル露出メーンのプロモーションもなく、純粋にいい曲が多くの人に聴かれるという。そんな名曲が生まれると、また音楽業界の考え方が柔らかくなると思うのですが。

山口 その通りですね。音楽ストリーミングサービスって、CDの代替みたいに捉えている人が多いのですが、どちらかというラジオの進化形と捉えたほうが近いというのが僕の持論です。

 さて、そんなUruの「星の中の君」から、どんな妄想分析が出てきますか?

伊藤 君は帰ってしまう。もっと一緒にいたい、そう願っても僕は君を引き留められるような言葉をもっていない。いつかのプリンセスのように、月に帰っていく運命なのだ。

 光が塵を映し出す。スローモーション、君の横顔、揺れる髪。右から左へ、今から未来へ。君がいなくなったら胸を痛めるだろう僕は手を伸ばす。どうせ届かない手は空を彷徨い、どうせ何の意味も持たない。君は扉を開け、僕にとって何処でもいい何処かへと帰っていく。そして此処には、知らなくてよかった痛みだけが残る。

山口 インスタレーションみたいな世界!

Uru「星の中の君」
ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ 2016年6月15日発売
初回生産限定盤[CD+DVD]1,667円、通常盤[CD]1,111円(税抜)
■Uruは、2013年よりYouTubeの公式チャンネルを立ち上げ、Jポップを中心に様々なジャンルの楽曲をカバー。幅広い年代から支持を得る。このデビューシングルには、『夏美のホタル』の主題歌である表題曲の他、蔦谷好位置が編曲を手がけた「WORKAHOLIC」、武部聡志が編曲を行った「すなお」が収められている。
■「星の中の君」作詞/Hidenori、Uru 作曲・編曲/Hidenori、トオミ ヨウ
■オフィシャルサイトURL http://uru-official.com/

【動画サイト】
「星の中の君」

URL https://www.youtube.com/watch?v=b-Vi6SjHC1E

2016.06.13(月)
文=山口哲一、伊藤涼