今や世界中で人気のワインを生んだ
イタリアにある小さな村の奇跡

イタリア3大ワインの生産地へと飛躍した歴史

 そんなのどかな町を一躍有名したのが、この地方で作られるワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」。世界の人々を魅了する深い味わいを持つこのワインは、初めからおいしいワインとしてここにあったのではなく、実は生産者のたゆまぬ研究と努力で生まれたものなのです。

試飲会に出品していたブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生産者のひとつ「PODERE LE RIPI」。

 「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」という名は、ブルネッロというぶどう品種を使ったモンタルチーノのワインという意味。このブルネッロというぶどう品種、実はこの地方の原産種であるサンジョヴェーゼの突然変異によってできた亜種。サンジョヴェーゼより厚い皮と大きな実をしています。

 他のぶどうと比べ、タンニンが強く、味わいも深い、このぶどうに注目し、よりおいしいワインにする研究を重ねた一家がありました。強い個性と力強さを持ったこのぶどうをいかに熟成させ、おいしいワインにするか、その研究はなんと6代にもわたって継承され、ついにブルネッロ種を使ったワイン「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」が誕生したのです。

試飲会場での様子。

 長期間の熟成を経ることで、強い個性は調和がとれ、しっかりとした渋みとエレガントな酸味、そして濃厚な果実味を感じる印象深い味わいのワインとなります。世界の品評会でも高い評価を得たこのワインは、世界中のワイン好きを魅了していきました。

ワイナリー「SANTA GIULIA」のぶどう畑。

 こちらはブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生産者のひとつ「サンタ・ジュリア(SANTA GIULIA)」のワイナリー。この伸びやかな大地が力強いぶどうを育てます。

左：サンタ・ジュリアのワイン蔵。
右：ワイナリーでの試飲。試食に出された手作りのハムもまた絶品。

 こちらのワイナリーでは、申し込めば見学と試飲ができます。育った環境を見れば、その味わいもよりよく理解できます。

豊かで美しい表情をみせてくれるモンタルチーノの自然。

 美しい自然と人々の真摯な努力が育んだブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、日本でも人気で多く取り扱われています。その豊かな味わいにぜひ出会ってみてください。

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー＆ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブックはこちら。 https://www.facebook.com/chococogogo

文・撮影＝藤原亮子